© Successió Miró / ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2024 G3550
ミロは、1936年の夏から秋にかけて、同じサイズ(108×78 cm)のメゾナイト(木屑を固めた合板)を支持体とする27点の作品に取り組んだ。これはそのうちの1点で、油彩やカゼイン塗料、タール、砂などさまざまな材料を使って描かれている。ミロ自身は「とてもがっしりした素材」であるメゾナイトに描かれたこれらの絵には、「強い表現力と、強い素材の力がある」と語っている(ピエール・マティス宛て1936年9月28日付の手紙より)。本作品において、画面中央のやや右上には複数の穴が開けられ、下部中央の黒い円形のモティーフの内部には、強い圧力をかけたと思しき凹みがある。ミロがここで、素材そのものの表現力を追求しようとしたことは明らかである。 再びミロの言葉を引用すると、「もし石のかけらが画面から落ちたとしても、あまり気にすることはありません。そのことはもともと計算済みですから。石が落ちれば、それによってこの近作から美しいオブジェとしての性質が失われ、力がいっそう強くなります。絵の表面は崩れかけた古い壁のようになり、造形的な表現力は非常に強烈なものになるでしょう」(ピエール・マティス宛て1936年11月16日付の手紙より)。このように粗野な素材を用いた作品が描かれたことには、ファシズムの台頭(1936年7月にはスペイン内戦が勃発する)が関連していると考えられている。こうした表現は、第二次大戦後に顕在化する、フォートリエやタピエスらの「物質としての絵画」を予告しているといえるだろう。
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