このページではJavaScriptを使用しています。JavaScriptを有効にして下さい。

長崎県美術館

所蔵品検索

作品検索

作品詳細

( 1969(昭和44)年)

Moths 出品履歴

鴨居玲 Rei KAMOI
作品解説
  1969年3月、鴨居は《静止した刻》(東京国立近代美術館)によって安井賞を獲得したが、この作品は同じ年の11月に行われた第1回昭和会受賞作家展に招待出品したものである。ここに見られる堅牢で緻密なデッサンに基づいて描かれた人物像は、すでに鴨居独自の画風が確立されたことを物語る。そこには画業前半期の作品においてしばしば見られた自己の迷いは見出せない。
明らかに自画像と見て取れるものとしては、かなり早い時期のものである。バーのカウンターのような台に寄りかかった鴨居自身がこちら側を向いている。そして半開きになった口からは蛾が湧き出ている。「蛾」は1965年頃から画家がしばしば取り上げたモティーフであるが、それが口から湧き出る様子について鴨居は「しゃべることの空しさ」を象徴するものと語っている。さらに、これが人生そのものの空しさへとつながるものであるという指摘もある。しゃべる言葉を蛾になぞらえ、言葉そのものを空しいものとする鴨居の態度は、言葉を主な媒体とする人間関係をも空しいものとすることにもなり得るだろう。
鴨居の描く人物像にはしばしば口をだらしなく開けたものが多い。これは画業後期に繰り返し制作された自画像に共通するものである。どこか呆けたようなこの姿からは、意志のなさ、つまり「生」の放棄さえも感じ取れよう。どこまでも暗い闇の背景から不気味な光に照らし出された鴨居自身に、すでに「死」の影が宿っている。
 
作品詳細
素材・技法 油彩・カンヴァス
素材・技法(英文) Oil on canvas
サイズ F40 (80.5×100)cm 
コレクション名  
備考 1969年「昭和会受賞作家展」(銀座・日動サロン)、1974年「県内在住安井賞受賞画家 西村功・鴨居玲・山本文彦・中西勝」(兵庫県立近代美術館)出品ほか出品
関連収蔵資料
図書
資料

前のページへ戻る