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圏’85 ( 1985(昭和60)年)

Category '85 出品履歴

木村一生 Issho KIMURA
作品解説
  1985年に銀座の日辰画廊において開催された個展「木村一生展―1985 圏―」の出品作。
 1950年代の終盤に本格的なキャリアをスタートさせた木村は、一貫して不定形なフォルムがうごめく抽象的な画面を制作してきた。1970年代中盤から制作され「気配」と名づけられた一連の作品において一定のスタイルを確立。パステル調の淡い色彩による陰影によって浮かび上がる襞のようなフォルムが、メビウスの環やクラインの壺のように反転しつつ連続し、異なる位相の時空が混然と嵌入しあうかのような独自の画面を生み出した。
 本作品は1980年代より制作された「圏」というタイトルを持つ一連の作品のうちの一つ。ここでも淡い色彩の陰影によって地と図とが反転しつつ連続する相互規定的なフォルムが生み出され、画面には不安定な静寂が満ちている。同年に記されたテキストにおいて木村は次のように語っている。「ほんの少しでも動くと、ものごとが、ガラガラと音をたててくずれ落ちる……そんな気配がある。(中略)彼は、現代社会の現実に直面しつつ、人間像のさまざまな今日的有様に耳をすます。そして最もプリミティブなところで内的空間の多角的表現に心をうばわれるのである。(中略)現代社会における多義的空間は、やがて、異なったパリティの間の出来事―圏―に移行する。そこには大きな圧れき(原文ママ)が生じやがて、ゆがみ、反転し、ころげ廻る」。木村は「パリティ」(量子力学における粒子の属性)、あるいは数学的な「圏」という概念を持ち出しながら、社会の在り方を分割的に捉えるのではなく、様々な属性を持ちつつ相互作用を及ぼしあう無数の事象のまとまりとして捉えようとしている。木村の方法は世界を知覚する自己の内面を分析し再構築するのではなく、その在り様を直接的に描き提示しようとする現象学的方法と言えるだろう。
 
作品詳細
素材・技法 油彩・カンヴァス
素材・技法(英文) Oil on canvas
サイズ 162×112cm
コレクション名  
備考  
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