「みえる人とみえない人がつくる美術鑑賞講座」を実施しました。
2月28日(日)教育普及・生涯学習関連企画「みえる人とみえない人がつくる美術鑑賞講座」を実施しました。

講師に、ソフィ・カル展関連企画・鑑賞ワークショップでも講師をしていただいた団体「視覚障害者とつくる美術鑑賞ワークショップ」の、林建太さん、木下路徳さんです。



おふたりは日頃、東京近郊の美術館を中心に、障害の有無にかかわらず、多様な背景を持つ人が集まり「対話」を通して一緒に作品を鑑賞するワークショップを実施されています。

「芸術や文化へのアクセシビリティを高める」といったバリアフリー的な意味合い、そして「参加者同士が他者との対話を通して、自分の価値観を見つめ直し、新たな美術の楽しみを見つけること」という2つの目的をもって、みえる人もみえない人もみんなで作品を鑑賞する場を作ろうとされています。



講座では、参加者の中から3名ほど実際に鑑賞ワークショップを体験していただきました。

視覚障害者である木下さんのナビゲートのもと、鑑賞したのは当館所蔵の作品 小波魚青 <<楓鹿松鶴図屏風 >>。
「みえること」「みえないこと」「みえにくいこと」について主観・客観を交えて話していきました。



作品が屏風であること、そして鹿、もみじ、鶴、松などの構成要素の話題から、徐々に動物たちの関係性や心情を想像してみたり……そして、あたかもその作品の中にいるかのように風や空気感、音、動物の鳴き声に至るまでイメージが膨らんでいきました。
実は参加いただいた3名が対話による鑑賞をしている間、会場でも隣同士で対話しながら鑑賞を深められている姿が見受けられました。いつの間にか、会場全体も一緒になって作品を味わっていることに驚きを感じるとともに、鑑賞の楽しさを実感する時間となりました。



参加された方々からは、様々な感想をいただきました。
「みえる、みえないに関係なく助けてあげるという意識ではなく、ともにアートを楽しむことができたらいいなあと思いました」
「ひとつの作品に対して、みんなの感じ方、みかたが違うのがとてもおもしろかった」
「自分とは違う感じ方を知ることができよかった。みえる人もみえない人も一緒に鑑賞できるのがよいと思った」
「みえているのに気づいていないこと(みえていないこと)がありました」など。

講師の林さんもおっしゃっていましたが、美術鑑賞には「こうあるべき」という正解のようなものはありません。今回の講座が、皆様にとって「こういう見かたもあるのだな」という発見と、美術を楽しむひとつのきっかけになれば幸いです。

今後、当館 教育普及チームとしましても、様々な状況の人たちに、美術館での作品鑑賞を楽しんでいただけるよう、多様な機会をさらに充実させていくことができればと思いました。




| ワークショップ・講演会 | 03:55 PM |